読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

猫尾製作所

あまりアテにしないでね

集合がある演算について閉じているとは

数学 代数学

定義

集合 S が、ある演算子 ☆ について閉じているとは次のようなことをいっています。

∀ a, b ∈ S, a☆b ∈ S

数学の言語を用いましたが、日本語で敢えて説明するならば「集合 S の中からどの2つの数(数でないとしても、2項演算が定義されるのであればOK)a, b を選んでも、a と b に対して行った2項演算 a☆b も集合 S に属する」ということになります。

例示

たとえば、自然数自然数に 0 を含めるかどうかは個人の判断、あるいは数学の分野によって方便が効くように、などの理由もあり、議論がわかれますが)全体の集合 { 0, 1, 2, 3, … } は 加法(演算子 + によって定義される演算) について閉じているでしょうか。

3 + 5 = 8 だとか 314 + 271 = 585 だとかいろいろな例を作れはします。ある命題において、反例が一つでもあると、その命題は偽であるという結論になります。しかし、命題の成立を示すためには、反例がまったくないことを示さなければならないこともあります。

しかし、ここでは単に、ある自然数 a に自然数 b を加えると必ず a 以上になるという自明(?)ともいえる事実より、a + b もまた自然数である。つまりは「自然数全体の集合は加法について閉じている」と結論付けられます。

しかし、減法 - についてはどうでしょう。たとえば 12 - 7 = 5 だとか 567 - 355 = 212 という例を見ると自然数マイナス自然数もまた自然数になっているのではと推測できます。しかし、10 - 13 とか 132 - 163 なんて式だと結果は負の数になってしまいます。ちなみに、負の数の概念は通常中学校1年次に教わるので、小学生にとっては 10 - 13 とか 132 - 163 なんてナンセンスな演算だと思います。さて、反例を1つといわず2つも挙げたので、自然数全体の集合は減法について閉じていないということになります。

では、自然数全体の集合は乗法 × については閉じているでしょうか。a × b = a + a + a + … + a + a (右辺は a を b 回足し合わせたもの)と変形すれば(b が自然数なのでこういうふうな冗長な書き方でもなんとかなります)、閉じていることは確認できます。

先程、自然数全体の集合は減法については閉じていないことをお話しましたが、対象とする集合を負の数を含めた整数全体にもっていくとどうでしょう。こうすると、整数全体の集合は減法について閉じているのです。整数全体の集合は減法だけではなく、加法・乗法についてもまた閉じていることもわりあい用意に確認できます。

では、割り算、つまりは除法については自然数全体とか整数全体の集合で閉じているでしょうか。15 ÷ 5 = 3 だとか 341 ÷ 11 = 31、あるいは (-120) ÷ 5 = -24 なんては整数で答えが出ます。しかし、そう甘くはないのです。整数の集合から 2, 3 を選んで 2 ÷ 3 を作っても結果は整数ではありませんね。自然数でも同じことがいえます。

まとめますと、ある集合から任意の2つ要素を選んで、2項演算を施した結果もまたもとの集合に属していれば、その集合はその演算について閉じているのであり、その例として自然数全体の集合は加法と乗法について閉じており、整数全体の集合は加法、減法および乗法について閉じているのです。

有理数では?

では、有理数の全体の集合では、加法・減法・乗法・除法のどれらについて閉じているのでしょうか?有理数とは (整数)÷(整数) という形で表される数のことです。整数に限らなくてもいいのです。2/3, 7/19, -22/7, 355/113, 2311/1000 なんてのは有理数です。ちょっと躊躇はしますが、分数といいかえてしまってもいいのかも。

しかし、重要な注意事項はあります。割り算ですので 0 で割ること、つまり分数の分母が 0 ではいけません。しかし、有理数の中には 0 も当然含むので、有理数は除法について閉じていない、ということになりそうです。たった一つの数 0 だけのためになんて思うとちょっと悔しい?

一方、加法と減法及び乗法については閉じております。2つの有理数 a/b, c/d を 有理数の集合から選びます。a, c は整数、b, d は正の整数です。b, d を正の整数とした理由は、0 での割り算が数学におけるタブーであること、また b, d に負の整数を認めなくても、分子の符号を逆転すればいいからです。

  • a/b + c/d = ad/bd + bc/bd = (ad+bc)/bd
  • a/b - c/d = ad/bd - bc/bd = (ad-bc)/bd
  • a/b × c/d = ac/bd

自然数や整数は加法と乗法で閉じているので、計算結果は (整数)/(正の整数) の形となり有理数が加法・減法・乗法について閉じていることが確認できます。

では除法(割り算)では?

  • a/b ÷ c/d = a/b × d/c = ad/bc

ここで注意したいのは、割り算から掛け算に直すときの分母分子の反転もさることながら、計算結果の分母 bc についてです。b は正の整数なので 0 になりえませんが、c は整数という縛りつけしかないので 0 にもなりえます。もし c = 0 なら bc = 0 になってしまいます。つまり割り算の結果が定義できないのです。

さて、c = 0 となるのはどんな場合でしょう。c/d という分数を「割る数」としましたが、c = 0 ということは c/d = 0/d 、すなわち割る数が 0 という場合のときのことになります。

ですので、有理数全体の集合は除法について閉じておりません。しかし、有理数全体の集合から 0 を排除した集合  \mathbb{Q} - \{ 0 \} においては除法について閉じています。

なお、後者の集合(有理数全体から 0 を排除した集合)では加法と減法については閉じておりません。1/2 と -1/2 を選んで足し合わせたり、1/3 と 1/3 を選んで引いたりすると結果が 0 となり、後者の集合に含まないものになるからです。

なお、実数についても加減乗除に関しては、有理数と似たようなことになります。

まとめ

対象とする集合 閉じている演算
自然数全体  \mathbb{N} 加・乗
整数全体  \mathbb{Z} 加・減・乗
有理数全体  \mathbb{Q} 加・減・乗 *1
0を除く有理数全体  \mathbb{Q} - \{ 0 \} 乗・除
実数全体  \mathbb{R} 加・減・乗 *2
0を除く実数全体  \mathbb{R} - \{ 0 \} 乗・除

補足

「0 で割ってはいけない」という除法の根本的なルールを除法というもの自体に組み入れると、有理数全体・実数全体は加・減・乗だけではなく除法についても閉じているといえます。

*1:注:補足あり

*2:注:補足あり